妙見ケーブル・リフトの廃止予定に想う。
(※画像はWikipediaより)
23年6月下旬、能勢電鉄は、妙見山の妙見の森関連事業の終了を発表し、併せて妙見の森ケーブル・リフトの両路線を廃止することを明らかにしました。
それを聞いた時の私の第一の感想は、やはり「まじかおい!?」でしたね。
関西において、鉄道会社による正式なケーブルカー路線が廃線になること自体、戦後は極めて異例どころか、殆ど例が無かったように思います。
(箕面スパーガーデンや兵衛旅館向陽閣などのように、ホテルや旅館などに付随した、鉄道会社の路線でない物なら、幾つか廃止事例があります。また、ロープウェイやリフトも、滋賀の比良ロープウェイ・リフトが平成に入ってから廃止になるなど、それなりの例があります)
加えて、子どもの頃に何度も乗った思い出の路線であり、そこにあって当たり前、という感覚だっただけに、路線が廃止で無くなるというのは、本当に驚きでした。
もっと言えば、かつて同じ妙見の森にあった、シグナス森林鉄道が数年前に廃止になったのも、今回のケーブル・リフト廃止を含む妙見の森関連事業の終了の、事実上の前触れだったのではないか、という気もしてしまいます。
阪急直営のケーブルカー路線は確か無かったように思うので、能勢電が妙見ケーブルから撤退すれば、阪急グループからはケーブルカー路線が完全に姿を消すことになりますね。
そしてもう1つ着目するならば、このケーブルカーは広軌(1435mm)を採用している点。
日本の殆どのケーブルカーは、JRと同じ狭軌(1067mm)を採用しているため、広軌を採用している路線は、ここと静岡の十国峠の僅か2つしか事例がありません。
つまり、妙見ケーブルが廃止になれば、そんな貴重な広軌ケーブルの1つが失われてしまい、残されるのは十国峠の路線のみとなってしまうのです。
そのように希少種の1つが姿を消してしまうのは残念ですが、その分残される十国峠の路線には、今後も頑張ってほしいものです。
ちなみに、十国峠の路線に関しても元々は、戦時中に廃止になった妙見ケーブルの上部線の設備を転用して開業したとか。
しかも、戦前に妙見山で使われていたその設備は、今も現役で使われているという話もあります。
本家本元の妙見山の路線は廃線となってしまい、そこから転用されたDNAだけが遠方で生き残ることになりますが、だからこそ、妙見山の路線無き後も、尚更そのDNAを今後もしっかりと、遠い静岡の地で受け継いでほしいと思います。
能勢電鉄妙見線は元々、妙見ケーブルと併せて、妙見山への参詣路線として開業しましたが、ケーブル・リフト廃止後はそういった意味合いや役割も無くなってしまうのだろうか、と思います。
妙見山への参拝ルートも、かねてからメインになりつつあると言われていた、阪急池田駅から山頂への直通バスに一本化されるのか、それとも妙見口駅からも、ケーブルの代替となるバス路線が設定されるのか、気になるところです。
(余談ですが、更に言うと、能勢電の山下〜妙見口間は川西能勢口方面との直通が無くなったとも聞いており、これは将来的なこの区間の廃止も目論んでいるのではないか、との不穏な噂も耳にしているのですが、果たして本当にその通りになってしまうのか、それとも阪堺電車の住吉〜恵美須町間みたいに、路線は維持するけど重視はしない、みたいにするのか、ここも注目点ですね)
更にもう1つ気になるのが、まだまだ気の早い話ですが、ケーブル・リフト廃止後は廃線跡をどうするのか、ということ。
登山道や遊歩道として整備するのか、それとも四国の屋島ケーブルみたいに放置されるのか、あるいは施設を全て撤去した上で植林して森に還されるのか、これらのいずれでもないのか・・・
現段階では何も決まっていないでしょうし、予想の域を出ることは出来ませんが、廃線跡にも興味がある自分としては、ケーブル・リフト廃線後の線路敷の処遇がどうなるかも、注目していきたいところです。
このように妙見ケーブル・リフトの廃止予定について長々と話してきましたが、能勢電からこの発表が最初にあった時には、当然ながらやはり大きな反響があったようです。
しかし自分の周りでは、鉄道関係の話題を扱うラジオ番組では触れられたり触れられなかったり、ツイッターでも話題になったりならなかったり……
自分にとっては本当に寝耳に水というレベルのかなり驚くようなニュースでしたが、自分の周囲に限っては、そこまで騒がれているわけでも、思ったほど話題が盛り上がっているわけでも無かったように思えます。
それゆえ、自分には大注目のニュースなのに、周囲はどことなく冷めているような……という状況のままなのも何だかさみしいので、今回ここで筆を取り、ここ最近では滅多に無いような長い文章で、自分の思いをあれやこれやとこのブログにぶつけた次第です。
現在の予定では、妙見の森ケーブル・リフトの廃止まで、あと約1年ほど。
例年の冬季運休の時期に合わせて、前倒しで廃止になるんじゃないか、という話もありますが、先述の思い出も特色もあるこれらの路線、廃線前にしっかりともう1度乗りに行って、消えゆく路線を味わうと共に、その最後を自分なりにしっかりと見届けたいものです。