【鉄道部品】JR西日本 681系試作車 側面種別幕(初期型)
金沢運転所(現在の金沢総合車両所)に所属していた、681系の先行試作車(プロトタイプ)で使用されていた物です。
使用当時はまだ特急サンダーバード号は登場しておらず、試作車は「ニュー雷鳥」と呼ばれていました。
つまり、この幕は試作車の登場直後に使われていた最初期の種別幕となります。
幕の製作年月は1992年5月。試作車が落成されたのが92年7月末なので、その前に刷られたことになります。
また、後に特急「スーパー雷鳥(サンダーバード)」号が登場するのが95年4月なので、この幕が使用されたのは約3年ほどということになります。
681系のプロトタイプ自体が僅か9両しかないこと、幕が使用されたのが30年ほども前であること、そして使用期間が僅か3年ほどであることを考えると、一定数が廃棄された可能性も加味すれば、現在におけるこの幕の現存数はそう多くないものと思われます。
また、鉄道部品として同一の幕が出回った話も聞いたことが無く、ネットでも情報が皆無に近いほどでした。
(それに反して入手価格は1万5千円ほどと、標準的な681系の幕(サンダーバード入り)に比べて随分と安くて驚きました。後述するように内容がシンプルだからでしょうか)
幕の収録内容は記事中の写真が全てです。また、以降2〜8枚目の画像の順番に収録されています。
先述の理由から「サンダーバード」は入っておらず、英字表記もありません。1コマ以外は全てモノクロで刷られており、白のゴシック体だけで表記されています。将来の加刷に備えて白幕も多いため、現行幕に比べてシンプルな内容となっています。
また、現行幕とは列車名の収録順が違う箇所があったり、現行幕には無い列車名も入っていたりします。
「特急」〜「普通」の種別表記も、全て白の普通のゴシック体で書かれています。現在のJR西日本の幕では、あの独特の斜体で種別ごとに色分けされているものなので、現行幕とは大きく違う特徴ですね。
「回送」「試運転」のコマは、試作車として頻用されたのでしょう、写真では分かりませんが、劣化して破れ補修が目立つコマとなっています。なお「回送」コマは現行幕と異なる位置に入っています。
「臨時」「団体」のコマも現在とは違い、普通のゴシック体で表記されています。
「JR」ロゴは現在同様に青色で刷られており、この幕における唯一の色付きコマとなっています。
このコマは試作車の甲種輸送の時にも表示していたらしく、下記の方のツイートで幕窓部分を拡大してみると、青いJRロゴが表示されているのが見て取れます。
mobile.twitter.comサンダーバードと言うよりは
— 大庭掃部助兵衛 (@114514_YJSNPI) July 16, 2018
ニュー雷鳥、スーパー雷鳥と言われる頃の681系先行試作車 pic.twitter.com/JCo0rCfkmn
この幕の「JR」ロゴも、完成間もない頃のプロトタイプの甲種輸送を見守っていたのでしょう。
「JR」ロゴから次の表示までは、6コマ分の長い白幕となっています。
現行幕ではここに「おはようエクスプレス」や「びわこエクスプレス」などが入っているのですが、この当時は将来の加刷を見越して大きく空けておいたようです。
その次は「スーパー雷鳥」。現行幕にも英字入りで入っています。
この初期幕の「スーパー雷鳥」を実車で表示した様子はWikipediaにも写真が載っており、下記の画像の幕窓を拡大すると「スーパー雷鳥」と書かれているのが辛うじて読めます。
(Wikipedia『JR西日本681系電車』より引用)
この表示が営業運転で使われたことは無かったと思われますが、留置中にこのように表示させることはあったのですね。
その後は「スーパー雷鳥信越/立山/宇奈月」と、当時存在した臨時列車の表示が続きます。
白幕を1コマ挟んで次に来るのが「雷鳥」。この幕の要となる表示です。
681系試作車は、まだ「ニュー雷鳥」と呼ばれていた頃、臨時雷鳥として営業運転に就いていました。
この「雷鳥」コマは、そんな「ニュー雷鳥」たる臨時雷鳥でまさしく使われていた物で、他の列車名の表示が使用感が無くピカピカな中で、この「雷鳥」表示は使用感が残っています。
そんなこの表示が現役の頃の写真が下記の方のツイートに載っており、幕窓に英字表記の無い「雷鳥」が表示されている様子がしっかりと写っています。
mobile.twitter.com特急雷鳥#681系#先行試作車#プロトタイプ#ニュー雷鳥#雷鳥100号#北陸本線
— かた44たか (@48katashiyo) June 29, 2020
富山駅
クハ680-1先頭貫通9連
クロはスーパー雷鳥485系同様新潟向き。
列車愛称幕は漢字のみでした。
号車・座席表示はステッカー?かな。 pic.twitter.com/nI3UG4VjuN
上記ツイートの写真に写っている初期幕がこのように今でも現存していると思う人は、果たしてどのくらい居るでしょうか。
上記で使われていた幕がまさしく今手元に…と思うと、感慨深いものがあります。
その先は「しらさぎ」「加越」「北越」と来ます。
「加越」「北越」は、後のバージョンの幕では「雷鳥」よりも前の順番に移されています。
「きらめき」「かがやき」はこの初期幕だけに入っている表示で、「スーパー雷鳥(サンダーバード)」登場以降の幕には入れられていません。
北陸特急用の車両ながらこの2つが初期しか入れられなかったのは、少し意外な気もします。
「かがやき」から先はまた、4コマの少し長い白幕となっています。
「きたぐに」から「マリン雷鳥」までは、大部分が現行幕の末尾と同内容となっています。
「アルペン」は殆ど使われていないはずですが、何故か傷が入っています。
その中でも、上の写真において特筆すべき、初期幕にしか無い表示があります。「シャレー軽井沢」です。
実際のこの列車は、90年代初頭に583系により運転されていた臨時寝台急行で、神戸〜軽井沢間を結んでいたのですが、その幕がかつて681系(試作車)にも入っていたことになります。
そのような夜行列車の代走がこのような座席車両でも想定されていただろうとは、乗車時を想像しただけで何だか疲れそうですね。
「681系のシャレー軽井沢」……使用車両としても方向幕としても、一風変わった "幻の存在" と言えそうです。
なお「びわこライナー」「リゾート立山」「シュプール」は、現行幕とは登場する順序が異なっています。
【備考】2022年2月、関西の鉄道部品店にて入手
(※この記事はかつてミューゼオで公開していた物を、再編集の上で再掲したものです。)